レマニア社のCal. 1873は言わずと知れたオメガ社の
Cal. 861で、Cal. 321の後継ムーブメントである。
振動数はCal.321の5振動から6振動に高められた。
最大の変更点はクロノグラフのスタート/ストップ/
リセットを制御する機構がシンプルなカム式に変更
され、部品数が減ったことである。これにより分解/
組立てが短時間で済み、メンテナンスが容易なムー
ブメントになった。
センタークロノグラフ車のブレーキが初期のモノは
金属製であるが、後期のモノは画像のように樹脂製
である。このことを「コストダウンのため」と断言
する人が多いが、はたしてそうであろうか?この部
品はセンタークロノ針が停止時に、歯車を押さえて
針を固定するためのモノである。歯車の側面を直接
押さえるので、負担を軽減するために金属より柔ら
かい樹脂製に変更されたと考えている。
このムーブメントはブリッジにブライトリング銘が
刻印されている。デッドストックで手に入れたが、
薄紙に包まれて届いたので、ゴミ/ホコリだらけだ。
要オーバーホールである。

普段は見ることが出来ない文字板の下側の構造はこの
ような感じである。右の画像は12時間計のブリッジ
を外したところである。12時間計車には香箱からほ
ぼダイレクトに動力が供給されているのが分かる。
クロノグラフ作動時は香箱真に取り付けられた駆動車
が摩擦力で香箱真と共に回転し、12時間車を回転さ
せる。グラフ停止時はストップレバーが12時間車を
押さえて止めている。この時、駆動車も止まり、香箱
真が駆動車の内側で空転している。香箱真と駆動車の
磨耗のことだけを考えると、クロノグラフは常に作動
させ続けたほうが良いと言える。クロノグラフ停止時
に12時間計だけが動き続ける故障があるが、原因は
ストップレバーの調整不良である。

Lemania Cal. 1873 (Omega Cal. 861)を入手でき
たからと言って、そのままスピードマスター・プロ
のケースに組み込んでもクロノグラフが上手く作動
しない場合が多い。スタート/ストップボタンに連動
するオペレーティングレバーに専用のエクステンシ
ョンを、リセットボタンに連動するステムを同じく
専用のモノに交換する必要があるからだ。右の画像
の上にある3つのエクステンションの真ん中のモノ、
下のステムの長いほうがスピードマスター・プロ用
である。





















オメガ社のCal. 861(上)と比較してみても、同じムー
ブメントであることが分かる。しかし、仕様違いにより、
僅かに寸法が違う部品が数点あることが判明した。交換
部品が増えそうである。
このムーブメントを手にした時にいつも思うのはその小
ささである。Cal. 321もそうであるが、ムーブメントの
直径が27mmというサイズは、クロノグラフ以外のものを
含めた紳士用メカ・ムーブメントの中では小型である。
このムーブメントの基本設計が出来上がったのが60年
ほど前であることを考えると、当時いかに優れたムーブ
メントであったかを想像させられる。このムーブメント
の小型さゆえに、耐磁ケースリングや耐磁内蓋を組み込
んでもあのケースサイズに収まったのだ。ちなみに、小
ぶりなピードマスター・オートマティックのケースに納
められたムーブメント、Cal. 3220の直径は30mmである。





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